クリエイターのエージェント(クリエイティブマネジメント会社)について

クライアントやメディアとの「交渉などのコミュニケーションや事務処理が苦手なクリエイター」のサポート事業の必要性や有効性について、多くの声を聞きます。

実際に、ある分野のクリエイターに対してそれに近い事業に関わっていた経験もあり、なぜそういう事業が目立たない(&成り立たない)のか、その理由について書いてみます。

結論から言うと、クリエイティブマネジメント会社はいくつも存在しますし、何より数多の各種制作会社の存在意義はその部分の補完もあるのだと思います。

私もクリエイティブマネジメント会社に仕事発注していました。
私が関わったクリエイティブマネジメント会社は、脚本家やイラストレーター等の専門分野があり、クリエイターが業務提携契約の形や所属でつながり、営業活動やクライアント等との調整や進行管理や事務的な事をマネージャー役(や営業)が行い、クリエイターはクリエイティブ業務に集中でき、仕事を発注する側も「フリーランスクリエイターにありがちなリスク」回避になります。

ありがちなリスクとは、
「コミュニケーションや事務処理が苦手」というのは表向きの問題で、実際は別の問題を抱えているケースが多い事です。

例えば、基本的な仕事の約束(遅れの事前連絡をしない等)やビジネスルールを守らない、芸術家気取りで勘違いしていて「仕事である商品」として求められているもの(表現の方向性や入れてほしい物等)や社会への視点(クライアントの課題解決やユーザーニーズや景表法やリーガルチェック、コンプラなどの視点)がなく浅薄な自分勝手をオリジナル表現だと意地を張ったり、客先からの変更依頼を自分の考えを否定されたと思い込み憤慨する(自由な「作品」はプライベートでやればOK)等。

どれだけ作るものが素晴らしくても、納品への不安や社会人として著しく困った面がある場合、発注元はそういうクリエイターと仕事するのはリスクなのです。

クリエイターのマネジメントやサポート業務に近い事業に携わったことがありましたが、結論としてある程度以上のギャラが確保できるクリエイター相手でないと成立しない事業だと実感しました。

手がけてみるとわかるのですが、コミュニケーションや事務・マネジメント面の業務だけではなく、取次ぐ場合に必要になる「各分野のクリエイティブ知識とクライアントやオーダーの課題理解力と管理能力と個々のクリエイターの特性を理解した上でのハンドリング」には、知識も手間も膨大で、それに対してのマージン(エージェントのギャラ総額)は中々釣り合わないのです。
(なんなら普通にディレクション業務で各クリエイターに発注してる方が機能する)

同様の事にトライし、クリエイター側の隠れた問題で守っているはずの後ろ(クリエイター本人の気分次第)から撃たれ「クリエイターを生かすマネージャー・エージェント」を目指したのに折れた人達も見てきました。
(大体同じ、ありがちなリスクが理想で目隠しされ見えていなかったパターン)

なぜクリエイティブマネジメント会社が少なく(目立たず)、普通のクリエイターはあまりそういう会社と組まず、ある程度のレベル以上のクリエイターしか登録していないのかは、手間と難易度に対し、見合うだけのマージンを確保するにはある程度高額なギャラが確保できるクリエイターを複数抱えないと成り立たない事業だからです。志だけでは飯は食えません。

だから多くの“コミュニケーションが苦手なクリエイター”は独立ではなく、制作会社所属の方がトータルで見て機能する、という現状の結果となる様です。
(逆にコミュニケーションや事務やマネジメントが出来るクリエイターは独立してもやっていけて、それが苦手な場合は元所属していた会社の下請けになる形なら独立も可能ですが‥)

また、クリエイター側にマネージャー的調整の大切さやビジネス面への気遣いが不足している場合、マネージャー的な立場の制作会社の営業やディレクターに文句を言ってばかりだったり、自惚れて独立して仕事うまく回らなくて社会を呪ったり‥。

「マネジメントやディレクションが必要な人ほど、その必要性も見えていない」ので、その業務マージンを払う意味がわからなかったりして、クリエイターマネジメントサービスが事業として成立し辛いのです。
(海外のクリエイターやアーティストのマネジメントやエージェント業務の話はまた別の機会に)

逆にそういう「見えない所のありがたみ」がわかる人や、クリエイティビティが突出していて指名が入る様なクリエイターは、クリエイティブマネジメント会社と契約したり、コミュニケーション等が苦手でも理解ある発注元がついていて仕事が回っていたり、サポートしてくれるパートナーと組んでいたりします。

業界特性の差はあると思いますが、もしエージェントやマネジメント機能を求めるクリエイターさんがいらっしゃるなら、クリエイティブマネジメント会社と提携したり、理解あるディレクターのいる制作会社をエージェント的に使う考えを持っていただければ良いと思います。

追記)
作家や文化人が芸能事務所やPR会社と提携しているのもエージェント機能だと思います。
文化人キャスティングや文化イベントへの参画や、いわゆるメディアミックスの際のシビアな調整は「業界が解っている」エージェントがいた方がスムーズにwin-winになるようです。
ちなみによく広告に起用される作家や文化人は、そういう事を理解し業界が解っていて「協力的」でした。
Image by Pixabay 

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