アートごっことアート

前段として、あらゆる人は自由に表現していいし、それはアートだし、色々な考え方があっていいい。

ただ、日本の美術教育や一般知識の薄さや世相により、最近の現代アートの歪みや画壇の腐敗、ワナビーアーティストがのさばるメディア、商業デザインも含む、美術界隈の浅薄さが酷いので、言いたいことをいくつか。
まず、現代アートを観て、感性だけで感想を言うのはアレなことについて、秀逸な記事↓があったので記載

改めて言うけど、美術知識があるからエラいというのは違う。美術鑑賞は難しいとか敬遠させる意図もない。
ただ、「感性だけで作品を評する」「有名だから凄い」というのとは別の領域で体験した方が、立体的で何倍も面白いことが多いからだ。

人類数万年の美術を「味わって」きた人ほど、その作品に込められた意図や技法やオマージュや組み合わせの妙に感動できる。美術は感性と知性で人類数万年の歴史とエネルギーを味わえる感動体験だ。

例として、会田誠さんの「ジューサーミキサー」。好き嫌いは置いておいて、この作品が壮絶な現代アート界で評価される凄味は、エログロのインパクトではなくて、描かれた女体の技法が西洋絵画の技法で、アートを通してすり潰されてきたものを表すテーマ性と、それを伝達できる技術力と、家電であるミキサーというモチーフが、現代日本で描かれた作品という戦略性があるから。

ミレーの「落穂拾い」がなぜ教科書に載るのか、技術面やテイストは今では珍しくもないかもしれないが、それまで権力者や宗教をテーマにパトロンが描かせていた絵画に、庶民のシーンをテーマとした着眼点と観察眼がパイオニアスピリットだったのだ。

日本では西洋絵画と接したのがザックリ印象派の頃だから、「感じるままに」が世の中の正義っぽく叫ばれているのは承知しているし、欧米で「印象派が好き」と枕詞なしに言うのが恥ずかしいことなのもわかる。

ただ、デュシャンの「泉」も、ジョンケージの「4分33秒」も、ウォーホルのシルクスクリーンも、「考えるな感じろ」では楽しめないんじゃないかな。(頭いいとかではなく、そうか!という思考の閃光や愉しさ)

そして、そういう怒りを昇華しているのが、これまた好き嫌いでは語れない村上隆さん。「マイロンサムカウボーイ」の造形師さんのフィギュアはサブカルシーンでは数千円で買えるが、村上隆さんのコンセプトで作られたものは16億円だ。現代アートのコンテクストと、それを評価する面々でゼロがこれだけ変わるのだ。

行き過ぎて、美を感じないもの、この間のバナナをダクトテープで留めたものとか、正直オークションの暴走というものもあるかもしれないが、サービス精神溢れたデジタルインタラクティブアート以外は一般ウケ難しいものの方が多いのではないかと思う。
バンクシーを美術館で見るのは野暮だと思うし。

また、ノンクレのペイドパブでメディアに出て有名アーティストぶることも、お金で賞とって箔付けするのも、生存戦略としてはかまわない。ただ、鑑賞者が、有名だからとかで作品を評価する目が曇っているなら悲しい。
人の気分を害することでインパクトを狙ったり、自己顕示欲だけで本当は創作が好きじゃないのにブランディングでアーティストぶったり、パクって手柄を横取りする漫○家や、アートのガワを着て別の目的があるなど、ニセモノは好きじゃない。

もちろん、世に評価されるのが表現の価値ではない。人間が素直に作りたいと思い、一心に作ったものは全て素晴らしいのだ。自己満足や内輪ウケに過ぎなくても、人生の価値の一部だ。

ただ、それとは別に、世の中を見てあまりに残念だったり腹が立つことも多くて。
身近な話では、知人の画風をパクってかなりの額稼いでいる人の存在や、私自身も学生時代の出来レースで受賞取り消し(地元の名士の子息を受賞させるためだとか。高校の美術教師が泣いて憤慨していたが、そんなにダサい賞はいらない)とか、私の企画がコンペで負けたのに内容はイキで安い制作会社が実施していたりとか、色々。

また、行き過ぎた「自己実現教」に酔い、マ○○ー○ー○○○みたいな垂れ流しとか、認定制度の稼ぎ目的の団体とか。パクりやゴーストのお陰で表に出た恥知らずとか、カネコネで持っているセンセイとか、クリエイティブの仕事でも様々なものを見てきた。他にも山程言いたいことはあるが、とりあえず今回はこの位に。

私自身は素直にアートが好きだ。そして本当に作ることが好きだ。それは基本。

追記
ゴダールもホドロフスキーも、プラトンもニーチェも、ウッドストックもブルーノートも、バウハウスも琳派も、ブコウスキーも丸山健二もそうだけど、美術に限らず文化系の話を縦横無尽にできる仲間が増えて嬉しい。
前は美学校やBAR、でも皆卒業してしまい話が出来る人がいなくて少し寂しかったけど、今新しい場で、素養のある方々と共感や発見のコミュニケーションができて嬉しい。文化をそれぞれが、本気で味わってガムシャラに勉強やコレクションしてきた領域ならではの、その内的世界の広大さと豊かさを互いに開き合う。
わかる人にはわかる、ってことの充実感。

Image by Pixabay

不思議と夢の話~夜の魚~

心理学、精神世界、日常の中の不思議なこと。 わかり合える仲間や、どこかでひっそりと自分の感覚や内宇宙を考えている人へ向けて。 WEB↓ http://atelier-clos.jimdofree.com