古代文明、特に古代エジプト文明が好きだ。遺跡や美術の写真を眺める度、特徴的な神々、独特な表現形式が心地よく、砂漠の中の遥かなる時空に思いを馳せる。数千年前に人々の心を占めていた世界観がこうして美術品として残っていることが素晴らしいと思う。上野の美術館や、NYのメトロポリタン美術館でも現物を見たことがあるが、ひとつ私の穴場を書いておくことにした。
渋谷のTOWER RECORDの近くに「古代エジプト美術館」という所がある。とても小規模で、基本的に土日しか開いていないので、立地の割に知られていないようだ。独特な所なので安易に人に勧め難いのだが、同好の士には是非訪れてもらいたい。そこは日本一の個人コレクターのコレクションを時期替わりで展示している。
私がそこを訪れた際は、一般の博物館とは違い、ほぼ私の貸し切り状態で、数千年前の文化に存分に浸ることができた。サービス精神旺盛な学芸員の説明を聞き流しながら、欠けたレリーフの内容を想定したり(アンク十字と壺を持った人なので、おそらく神殿にお酒を捧げる壁画、と思ったら正解していた)、象形文字を読んでみたり、本物が放つ雰囲気に酔いしれた。
タロットカードにエジプトモチーフを足したのは、エキゾチズムを愛したフランスだが(当時英国との対立の中で、東インド会社もありインド文化を取り入れていた英国に対し、エジプト文明を持ち上げることで対抗しようとした時世もある)、具体的な表現形式が取っつきやすい一方、神秘的な世界は探求しがいがあって、貴族たちを夢中にさせたのだ。
そして、現代日本のポップカルチャーにもその影響は多分にある。都市伝説的になってしまうが、「現代のヒット作には古代エジプトの魔術的モチーフ」が仕込まれている。その力をかりて、ヒット作化しているという考え方がある。代表的なモチーフが「ホルスの目(ラーの目・ウジャドの目・神の目)」。
少年ジャンプの人気漫画複数や、ゲーム、アニメーションや新進気鋭のエンタメなどのタイトルロゴや服やキービジュアルに散見される。作品名を上げると膨大となる。モチーフとして“丸と線”なんてロゴ化しやすいだけで偶然だ深読みだ、と流すこともできるが、その物語構造も共通項が見いだせると、やはり“知恵元”が古代エジプトに関連しているのかなと思う。神や悪魔と呼ぶスピリットによる支配、人間が力を得るための覚醒のパターン(ホルスの目の代わりに片眼が赤くなったり、竜蛇のようなシェイプシフト、儀式の形式など)、なぜ戦うのか人間とは何かという主題。日本の密教や西洋の錬金術、南米文化などにも共通項があるし、アトランティスというファンタジーにもつながってくるが、これらを整理していくと、人間はどのように生み出され、支配されて生き、何のために戦おうとするのか、気が遠くなるほど残酷で深いテーマが埋まっているのだ。「古代宇宙飛行士説」が何故人の心を引きつけるのかも繋がってくる。さらに諸々調べていくと、世界最古の文明・古代メソポタミア(シュメール)に辿り着くのだが、それはまた今度。
古代エジプトモチーフを見るとき、私もあの“目”に見られているのかもしれない。そんな想像に浸ってみる。
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